(患者)「良くなるのにどのくらいかかりますか?」
(私)「ご自身の脳(治癒力)が治療を行うので、私には
答えることができません。」
(患者)「もちろん良くなる期間は人それぞれ違うと思い
ますが・・・だいたいどのくらいですか?」
(私)「似たような症状を持つ患者さんの回復例をご紹介
することはできますが、だいたいどのくらいかか
るかも答えることはできません。」
こちらの会話は、コンサルテーションの際、ほぼ確実に聞かれる質問と、その質問に対する私の返答です。
病院やその他診療所で『治るのに〇〇日くらいかかります』という答えをもらいなれている患者さんにとって、私の答えはなかなか納得しにくいもののようです。
ある患者さんからは「臨床経験から予測がたつのでは?」と言われたことがあります。
『臨床経験が増えれば予測が立つ』とは人間視点の考え方です。
自然の視点に立てば、『臨床経験が増えれば増えるほど、予測が立たない』のです。
その一例を同じような症状を訴えた患者さん3人を比較してご紹介します。
【注意:上部頚椎カイロは症状の回復に焦点を当てていません。上部頚椎部の神経の圧迫を取り除くことだけを目的としたカイロです。ただ今回は『臨床経験が増えれば増えるほど予測が立たない』ことをご理解していただくために、症状の回復を例にとってご説明しています。】
3人とも以下の症状の改善を求めて当オフィスにお出でになりました。
類似点:肩甲骨内側、上部の痛み
上腕から前腕にかけての痺れと痛み
39歳 49歳 67歳
↑はそれぞれの患者さんの年齢とレントゲン画像です。ざっくり言うと、横から見た首の状態は、年齢が上がるごとに悪くなっています。
この年齢と首の状態を考えると、ほとんどの方が、67歳の患者さんの症状の回復が一番時間がかかり、39歳の患者さんの症状の回復が一番早いと予測されるのではないでしょうか?
それはなぜか?・・・若ければ回復が早く、骨の状態がより良いほうが回復が早いという人間視点の常識による刷り込みがなされているからです。
さて、結果は・・・
6ヶ月前に症状が出た39歳の患者さんの回復が一番遅く、1年前に症状が出た、首の骨の状態がかなり悪い67歳の患者さんの回復が一番早かったのです。
↓の表は3人の患者さんを特定のカテゴリーで、もう少し詳しく比較したものです。【下の表をクリックするとワードファイルで大きく見ることができます】
この3人の例からも分かるように、若いから早く回復するとも言えないし、症状が出てからかなり時間が経っているから回復に時間がかかるとも言えません。またレントゲンに写る首の状態がかなり悪いから症状の回復には時間がかかるとも言えないのです。
つまるところ、臨床経験が増えれば増えるほど、回復期間は十人十色ということは分かっても、統計的にこれぐらいで回復するという予測はつかなくなっていくのです。どのくらいで治るのか・・・知っているのは自らの身体を治療する脳(自然治癒力)だけなのです。
この結果から言えるのは、症状の回復にかかる期間は『予測が立たない』ということ。そしてもう一つ、予測は立たないけれども上部の首の骨を調整し神経の圧迫を取り除くと、『自分のタイミングで症状は徐々に取れていく』ということなのです。